「ねん挫」

運動連鎖の影響を踏まえたリハビリテーションを実施

捻挫とは、関節が何らかの形で外力を受けることにより、生理的な足の可動範囲を超えて過度の運動を強制された場合に生じる関節の損傷をいいます。主たる損傷は、靭帯や関節包、皮下組織であり、骨折や脱臼を除くものとされます。
足関節の場合、大きく足首を内側に捻る「内反捻挫」と、外側に捻る「外反捻挫」に分けられますが、そのほとんどが内反捻挫です。

  • (内反捻挫)  (内反捻挫)
  • (外反捻挫)  (外反捻挫)
内反捻挫(足首を内側に捻る捻挫)の受傷機転
捻挫は、足関節のスポーツ障害では非常に頻度が高く、バレーボールやバドミントン、バスケットボール、テニスなどの種目では高率で発生しています。具体的には、ジャンプの着地で他人の足の上に乗ってしまったり、走行中のストップ動作で過度に足首を内側に捻ってしまったときなどに発生する場合が多いといえます。また日常生活では、段差を踏み外したり、歩行中つまずいて小趾側から着地してしまったり、ちょっとした凹凸で足を取られて受傷するケースも少なくありません。
足関節が背屈位(つま先が上を向いた状態)では安定するものの底屈位(つま先が下を向いた状態)では不安定になることや、足関節の構造上の特徴、靭帯についても足関節内側の靭帯は外側の靭帯より強靭であることから、内反捻挫になりやすいという特徴があります。内反捻挫では通常、足関節外側の靭帯で前距腓靭帯という靭帯が最も損傷しやすいのですが、それよりもさらに足が内反に強制されると踵腓靭帯も損傷してしまうなど、受傷時の内反角度によって損傷部位や程度が変わってきます。

(足関節の外側)
外反捻挫(足首を外側へ捻る捻挫)の受傷機転
外反捻挫は内反捻挫と違い、ほとんどのケースがコンタクト(接触)によって発生します。スポーツでは、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツで頻度が高く、日常生活では事故などにより外反強制されて発生する場合が多いといえます。この場合、足関節内側の三角靭帯単独損傷だけでなく、何らかの骨折を伴うことが少なくありません。
捻挫の治療
大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)の肉離れ
捻挫は通常、X線写真を撮って骨や関節に異常がなく、腫れも少ない場合には固定などせず、湿布と痛み止めの内服薬を処方します。腫脹・痛みが強い場合には、重症度に応じて急性期は炎症症状の抑制を目的に通常24時間から48時間のアイシングが行われ、その後ギプスやバンテージによって固定します。固定期間は損傷の程度に応じて3週間から5週間が多く、その後、痛みに応じて段階的なリハビリを行うようです。
ハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)の肉離れ
まず、どのような状況下で足関節がどのように捻ったか(受傷機転)を詳しく聴取します。その後、痛みの状況、足関節の不安定性、腫れの程度、足関節の可動性、筋力の状態をチェックします。不安定性のチェックとしては、前方引き出しテストや内返しストレステストなどがあり、どちらも反対側の足関節と比較してチェックしていきます。

当院の治療方針の大きな柱は、できるかぎりギプスなどを使わずにその場の痛みを取っていくことと、できるだけ早く日常の生活やスポーツに復帰させるということです。そのため、急性期からギプス固定はほとんど行わず、疼痛の生じない範囲内で足関節の関節モビライゼーションを実施し、損傷している靭帯周囲の皮下組織の血流を改善させることで腫れの軽減を図るとともに、疼痛の軽減を図っていきます。

また、股関節周囲の筋肉の柔軟性が低下した選手については、動作の切り替えし等の際に足部にかかるストレスが非常に大きくなります。そのため、捻挫の再発予防を含めた関節可動域の訓練においては、足関節の可動性・柔軟性を獲得するだけでなく、股関節や膝関節周囲筋の柔軟性を改善させることが重要となってきます。筋力においても股関節、特にお尻の筋肉である大殿筋の筋力が低下していると、地面に対して踏ん張る力が弱く、動作が不安定となって膝関節や足関節にかかるストレスが大きくなってきます。

単に安静固定、固定後の足関節可動域の訓練、足関節周囲の筋力訓練といった足関節だけに着目したリハビリではなく、競技特性などを考慮しながら、スポーツ動作における体幹−股関節−膝関節−足関節といった一連の運動連鎖による影響を踏まえた可動域訓練・筋力訓練・テーピング等のリハビリテーションを実施していくことが重要と考えます。

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