「冷え(手足・肩・お腹)」

西洋医学では“なす術がない”冷えも治療が可能

手足が冷える、お腹や背中が冷えるなどで困っている方は多いと思います。しかし、西洋医学のみの対応では、冷えに関してはほとんど「なす術がない」のが現状です。当院では漢方的な観点、栄養学的な観点から分析してみます。

漢方的な観点

瘀血
瘀血は女性特有のもので生理周期と関連があります。瘀血に伴う冷えは、末梢の循環障害が原因と言えます。生理との関連から言えば、血虚や貧血を伴う場合もあり、より病態が複雑になることもあります。当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)などが、その漢方です。
賢虚
加齢に伴う代謝や血流の低下が原因の冷えです。そのため、病態はかなり複雑で要素がいくつもあります。例えば、動脈硬化に伴う循環不全、胃腸機能低下による体を燃えさせる栄養素の不足、甲状腺機能の低下や代謝の低下などなどです。この病態を改善させる漢方は、八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などです。
血虚
がんや重篤な病態の疾患を抱えている方は栄養素が足らなくなり、末梢に血流をいきわたらせることができなくなり体が冷えてきます。このような病態を改善させる漢方は、十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、四物湯(しもつとう)などです。
脾虚
エネルギーを吸収する胃腸系に難があると、体の中で燃えるものが少なくなり、冷えにつながります。胃に問題がある場合は、六君子湯(りっくんしとう)、人参湯(にんじんとう)、腸に問題がある場合は、小建中湯(しょうけんちゅうとう)、大建中湯(だいけんちゅうとう)、真武湯(しんぶとう)などが、その漢方です。

栄養学的な観点

鉄不足
栄養学的な見方では、冷えの原因は何と言っても鉄不足です。鉄不足は代謝を低下させ、若い女性の冷えのほとんどの原因となっています。特に鉄不足は生理がある若い女性に多く、ほとんどの若い女性は鉄不足と言っても過言ではないでしょう。しかし、男性でも痔や胃潰瘍がある方は、女性と同じように鉄不足になり得ます。血液検査の中でヘモグロビン、フェリチン、MCVなどの値にて判断します。
ビタミンC不足
ビタミンCの大きな効果として抗酸化があります。我々の体の中のエネルギーであるATPは、糖と酸素によって細胞内のミトコンドリアで作られます。しかし、この過程でどうしても活性酸素が生じてきます。また体の中では、紫外線や化学物質暴露、疾患などによって多くの活性酸素が発生します。これらの活性酸素に対して抗酸化をもたらすことで、四肢や体幹の冷えの改善が期待できます。
ビタミンB不足
大量にお酒を飲む方、甘いものが大好きな方、スポーツや勉学でがんばっている方などは、ビタミンBが不足していると言えます。我々のエネルギーはATPによって得られるのですが、このATPの産生は、ビタミンB群なしでは不可能なのです。そのため、ビタミンBを内服すると急に元気にあるかたは多くおられます。ビタミンBは単独ではなく、B1、B2、B3、B5、B6、B12、ビオチン、葉酸という8つのビタミンBからなり、それらを含有するビタミンB群から摂取しないと、効果が期待できにくくなります。

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