お悩み「股関節の痛み」

小児の股関節痛の特徴と予後・治療

整形外科外来でよく見る股関節痛を年齢や原因から分類して痛みの成因・予後と治療法に関して私なりに述べてみます。

股関節痛の原因と年齢による違いについて
股関節痛の原因に股関節そのものに原因がある場合と腰椎からの神経痛の場合に大別します。
股関節そのものに原因が股関節痛の原因は年齢よって大きく異なり、幼児から小学校低学年まで、小学校低学年以降の小児、そして成人から老年期にかけての3つの年齢層に分けて解説してみたいと思います。

小児の股関節痛の特徴と予後
この頃に出現する股関節痛の中には頻度的には少ないのですが重篤なものとして乳児化膿性股関節炎、ペルテス病、大腿骨頭滑り症などがあります。これらの疾患は入院、薬物治療、手術治療などが必要になることもあります。これらの疾患は発熱したり機嫌悪かったり痛みの経過が長く跛行(歩き方がおかしい)などの症状が高頻度に出現します。ここではこれらに関しては詳しくは述べませんが保護者からみておかしいと思われたらできるだけ早く医療機関に行くことが必要となります。重篤な原因以外の小児の股関節痛は年齢・スポーツの種類・頻度・強度そして先行する風邪や腹痛などによって原因は変化しますが股関節の関節の特徴が痛みの原因に大きく関与していることが多いのです。逆の言い方をすれば原因が見当たらない股関節痛は股関節そのものに内的な理由がある場合があるため慎重になるべきでしょう。
1.幼児から小学校低学年までの股関節痛の特徴
最も多いのは良好な経過をたどる「単純性股関節炎」でしょう。スポーツや転倒などの外傷などの関与もなくレントゲン上も異常は見られません。(図1正常股関節)
親御さんの訴えは数日前より痛がって歩き方がおかしいと言われ来院されます。診察所見としては股関節そのものに圧痛があり股関節を徒手的に動かすと痛みを誘発します。これらの所見のみでペルテス病などの重篤なものではないとの判断はできません。経過を診て痛みの軽減傾向をみながら判断することが必要となります。「単純性股関節炎」であれば数日の経過で痛みは軽減傾向になり1-2週間程度で痛みは軽快します。原因としてははっきりしたことは言えませんが痛みに先立って発熱・風邪症状や腹痛・下痢などの「ウイルス」感染を思わせる症状が発現することもあり図2のごとくMRIにて関節液増加の所見がある時もあり「良性なウイルス性の股関節炎」の可能性も高いのではないでしょうか。(図2関節液の増加した股関節MRI)
どちらにしても薬物治療やさらなる検査などを必要しない予後良好な問題ない疾患です。しかしあくまで経過を診ないと重篤な疾患ではないと判断できないためやはり医療機関への受診は必要と言えます。

2-1.小学校低学年以降の股関節痛の特徴
〜スポーツの強度及び頻度が高い小児期の股関節痛〜
1.小児スポーツの昔と今の比較
私たちの時代(60年ほど前)の小学校低学年以降の小児期の遊びやスポーツは子供自身がルールを作り道具は棒みたいなバット、軟式テニスのボールみたいなもののみで野球をしたり、そこらにある缶やガラス玉で遊んでいました。疲れれば休むしある程度の緩いルールですので傑出した技量・運動能力の子供の出現することはありません。
それに対して現在の子供たちが野球やサッカーをするとなるとユニフォームは統一して、きちんとしたルールがあり大人のコーチのもので行うため、はたから見れば現在の子供たちの方が「かっこういい」「運動能力高い」「技術的に優れている」などの素晴らしい要素が多くあります。しかしこれらの利点達成のために子供たちの体に大きな負担がかかっていることを見逃すわけにはいけません。その一つが股関節痛なのです。
2.股関節の特徴と痛みの関係
元来股関節は体幹と下肢の分岐点・中継点であるためすべてのスポーツで重要かつ負担がかかる関節なのです。そのため股関節は直線的な運動でも重要な関節ですがこれにサッカー、バスケット、ラグビー、テニスなどのスポーツは全力で走っていて突然止まったり、方向転換をする必要があります。膝・足関節にも大きな負担がかかりますがこれらの関節の動きは股関節に比べ平面的な動きが主です。それに比べて股関節は回転運動(回旋)に対して自由度は高く直線的な動きだけでなく横や回転的な動きに対応しています。(図3球状の骨頭の股関節)
そのため膝や足関節にはない股関節の回転をつかさどる股関節周囲筋としての「股関節回旋筋群及び内外転筋群」がこれらの動きに重要な筋肉となります。(図4股関節回旋筋群が股関節の回転に関与する)
(図5、6股関節内外転筋群・股関節において大腿を内外側に動かす筋肉)

しかしそれまで小児期には運動負荷が少ないためあまり使わなかった「股関節回旋筋群及び内外転筋群」に大きな負荷がかかり筋損傷の原因になります。これ以外にも直線的な動きにて損傷するのは太ももをお腹の方に曲げる股関節屈曲筋損傷や太ももを後ろに蹴り上げる股関節伸展筋損傷もあります。(図7.8の股関節屈曲及び伸展筋)

3.治療と腰・膝・足への影響
これがこの時期のスポーツをされている小児の股関節痛の多くの原因となります。この時に股関節周囲筋の筋損傷は筋肉の柔軟性を低下させて股関節痛の原因になりますがそれだけにとどまらず別の部位の損傷や痛みの原因になります。これはスポーツの動きの中で股関節が体幹筋、膝周囲筋、足関節周囲筋の代償として重要な要素であるため股関節の動きに制限がかかると代償機能として腰椎・膝関節・足関節の動きにストレスがかかり腰痛、膝痛、足首の痛みなどの原因となるのです。この現象は細かな問診と股関節の可動域を詳細に診察すれば容易に明らかになります。治療としては原因になっているスポーツの一定期間の中断と股関節周囲筋の動きを出すための理学療法が必要となります。理学療法は一般的なストレッチと違い関節の滑りや回旋を理学療法士が特殊なテクニックを使い動きを出すことで股関節周囲筋の弛緩・除痛をしていきます。これらの治療に漢方治療や栄養療法として食事などの改善や栄養素のアドバイスを行います。これらの治療にて回復までの時間を大幅に短縮することができるようなります。
2-2.小学校低学年以降の小児の股関節痛
(股関節の屋根が浅い臼蓋形成不全と変形性股関節症)
臼蓋形成不全による痛み
臼蓋形成不全とは股関節の屋根に当たる臼蓋といわれる部分が狭く大腿骨頭との接触面が少ないため股関節の体重がかかる部分の軟骨の単位面積あたりにかかる荷重が増し軟骨がすり減ることで将来的に変形しやすくなることです。変形まで行かなくても痛みが出現して股関節周囲筋(特に図1の回旋筋群など)が痙攣をおこして股関節周囲の虚血性変化や痛みを引き起こします。元来臼蓋形成不全は小児期より存在するためこの状態がある小児はスポーツをすることで股関節の痛みが出現しやすい状態にあると言えます。成人の方も臼蓋形成不全があっても激しいスポーツなどをしない方は痛みを生ずる状況にならないため大人になって妊娠出産や肥満などにて初めて痛みを感じることがあります。

図9と図10の股関節を比較すると明らかに図10の股関節の屋根である臼蓋は浅く大腿骨頭のおさまりが不安定な印象を受けます。
このような状態で運動を続けると股関節が不安定なために股関節回旋筋群の痙攣や痛みが出現し、股関節周囲に痛みを引き起こすことが予想できます。痛みは一時的なものもありスポーツの中断や休息を上手くとりいれることで回復する可能は十分にあります。回復には理学療法によって股関節周囲筋の痙攣を軽減すると驚くほど容易に痛みが軽快することもあります。また栄養療法的なアプローチを行い食事の回数、好き嫌いの状態、便の回数や状態を詳細な問診で聞いて分析して足りてない栄養素を見つけ出しそれを補充することで驚くほど回復することはよくあります。

3.成人以降の股関節痛
股関節の変形による痛み
臼蓋形成不全があると加齢によって次第に軟骨がすり減り軟骨である関節のすきま次第に狭くなり周囲の骨にも変化が起こります。軽症の段階であれば手術をしないで済む保存的な治療を選択することになります。治療には手術をしない保存治療と人工関節などの手術的な治療に大別されます。保存的な治療とは薬物治療・理学療法士による理学療法・栄養療法などがあります。薬物療法には西洋医学的には短期的な痛みをとる痛み止めが主なものですが東洋医学的には漢方薬を使用するものがあります。後者の東洋医学的な漢方治療は中村博整形外科では特に力を入れており長期的な観点から効果的な治療と言えます。理学療法とは専門的見地にてトレーニングをつんだ理学療法士が股関節周囲の筋肉をリラックスさせて股関節にかかる圧を低下させたり、股関節の適合性の改善を良好にさせたり、歩行の仕方を改善することで股関節にかかる負担を低下させることなどにて短期的および長期的な股関節痛を改善し手術的な治療の回避とつながります。栄養療法は食事の回数・質そして足りない栄養素の補給などで全身状態及び股関節周囲の筋肉の改善そして軟骨再生などを目指します。理学療法および栄養療法は漢方治療と並び中村博整形外科の治療の本幹をなすものであり短期的な痛みも長期的な関節の状態もどちらも改善することを目標としています。(カスケードにて股関節の変形の程度を示しています)

股関節の変形~薬物治療・漢方

保存的な治療の中で痛み止めなどの薬物治療も選択の一つですが現実的には痛み止めでは関節の適合性をよくすることにはならないためあくまで頓服での選択した方が無難といえます。もう一つ薬物治療としては漢方治療があります。痛み止めに比し関節の適合性や筋肉の問題を根本的な視点から痛みに対処することになり長期処方が可能となります。
漢方治療
漢方治療とは西洋医学的な痛み止めは痛みを感じる経路を遮断したり痛みの伝達物質を減少させたりすることで痛みを緩和していきます。
それに対して漢方治療の根幹は全身状態と局所(ここでは股関節)の状態改善をすることで痛みを軽減したり関節の適合性を良くしたりします。
股関節が腫れて関節内に関節液が貯留して痛みがある場合の選択
1.越婢加朮湯:関節炎症を抑える石膏・麻黄を含有して関節液を減少させる
2.防已黄耆湯:関節液を減少させることに特化しておりむくみをとってやせる効果もある
3.五苓散:関節液とともに下肢のむくみがある場合に効果がある
4.当帰芍薬散:下肢のむくみと冷えがある場合に効果がある
5.桂枝茯苓丸薏苡仁:下肢に静脈系のうっ血がある場合に効果的
6.薏苡仁湯&桂枝加朮附湯:冷えと股関節痛がある場合に効果的
漢方治療〜全身状態の改善から痛みの緩和
体力低下して関節周囲の筋肉に問題を生じて痛みがある場合
1.補中益気湯:食欲・筋力が低下し強い疲労感を感じて痛みを強く感じる時に効果的
2.六君子湯:食欲低下が著しいときに食欲増進させることで痛みを緩和させる時に効果的
3.清暑益気湯:夏バテで体力低下して痛みが増悪する時に効果的
4.真武湯:慢性の下痢で体力を消耗している時
5.人参湯:慢性の下痢で冷えにて下痢の増悪がある場合

肥満回避

肥満を回避〜関節に過度の負担をかけないため〜
手術を回避またはできるだけ遅らせるには現状のすり減ったもしくはすり減りつつある軟骨の耐久度を高める工夫は必要なことになります。軟骨のすり減りを回避して耐久度を高めるには単位面積あたりにかかる関節圧力を減らすことがまず必要となります。当然肥満はいけないことですが体質的に太りやすい方はおられるわけで、そのような方に「食事を減らす」だけだけではかえって脂肪は減らずに筋肉量のみが減って痛みの増悪の原因になります。そこで自分の体質や生活習慣にあった肥満対策をする必要となってきます。
食事の回数
一般的に言って食事の回数は減らさずにその内容を充実させることが必要なります。というのも食事の回数を減らすと一時的には体重も減り、いいような印象ですが空腹時間が長くなると「いっぺんにドカ食い」「あまいものに食べる」「お酒でカロリーをとる」などの側面が出てきます。例えば「いっぺんにドカ食い」すれば多くの栄養素を消化吸収そして筋肉などのタンパク合成をする酵素に限界があるため体質としては多くのカロリーをいっぺんにとりインシュリンの分泌を促し脂肪合成に傾きやすくなります。(インシュリンはタンパク合成、脂肪合成を促進します)当然「あまいものに食べる」「お酒でカロリーをとる」などの行為は高インシュリン血症となり脂肪合成を促進して肥満の原因になるのです。このいい例がお相撲さんたちは朝食をとらずに空腹状態の2食にすることで体を大きくそして筋肉、脂肪合成を促進するのです。つまり回数は1日2食では太りやすくなり3食の方が太りにくいということになります。  このことは体重を増やさないことだけではなく、筋肉の質の維持にも必要で間違った肥満対策をすれば筋肉の質の低下を引き起こし股関節周囲筋の痙性(硬くなり股関節の動きを悪くする)となり変形を助長することになります。
食事の質・糖質制限について
1.食事の質ととるべき栄養素は?
食事は3回でドガ食いはせずに食べることが必要なことはお分かりになられたことでしょう。ではどんな食事がいいのでしょうか?断食したり糖質を極端に少なくしたりすれば一時的に体重は減って満足されるでしょうが、かえって筋肉量が少なくなり基礎代謝カロリーが減ってそのうちリバウンドして肥満を助長する結果となります。長期的な観点からすればやはり糖質(ごはん、パン、麺、イモなど)、タンパク質(肉、卵、魚、豆類など)、野菜などの組み合わせをきちんと守ることです。これらの栄養素を摂取する意味を述べてみます。
2.糖質制限の結末
糖質はエネルギーつまり生命維持に必要なカロリーのもとになるものです。ちまたでは糖質制限ダイエットが流行っていますが極端な糖質制限は糖質を必要としている臓器にダメージを与えます。例えば脳は体全体のエネルギーの20%を消費する大食い臓器です。その脳がメインのカロリー源としているのは糖です。脂肪そのものは諸事情で脳には到達しない仕組みがあります。脂肪の代謝産物のケトンは使うことはできますが、あくまでメインのカロリー源は糖ということになります。このためタンパクのみまたはほとんどタンパクの食事をしていると糖が枯渇していきます。そのため人体は緊急状態として体内に取り込んだタンパクを糖に変換するということをします。これは手の込んだ反応を進めることになり効率として悪くお勧めできるものではありません。その上タンパク質はカロリーとして消費されるため筋肉などに合成されるたんぱく質が枯渇し筋肉の萎縮や質の悪い筋肉を作る結果となります。
糖質制限と筋肉トレーニング
糖質制限をしながらタンパク中心の生活をして、筋肉をつけるためウエイトトレーニングなどの負荷の高い運動負荷をすれば筋トレの負荷による筋肥大のニーズからタンパクは筋肉合成に使われることになります。こうなると糖に変換されるべきタンパクも減り糖をメインの栄養素にしている脳はうまく働かなくなります。
数十年前に東大出身の伝説の世界レベルのボディビルダーが糖を極限まで摂取せず結果として「低血糖」で死亡する事件がおこりました。これはまさにタンパクの糖への変換がうまくいかずに糖の枯渇によっておこった悲しい出来事です。2022年にも同じようなことが起こります。彼はプロレスラー兼ボディビルダーですがYOU TUBERでもあります。死亡事件が起こる数日前に女性タレントとのコラボの動画で質問に答える際に足元がふらつく場面があります。明らかに「低血糖」で脳血流・脳機能の低下を垣間見る動画といえます。
世の中プロテインブームで忙しい方が1食をプロテインで代替することが多いようです。「低血糖」で死亡するようなことが起こらなくても脳の機能はその方が本来持っている機能より低下していることは容易に予想できます。プロテインダイエットをされている方で「体がだるい」「腰痛・肩こりがある」「怒りっぽくなった」「つまずきやすい」「足を家具によくぶつける」などの自覚症状がある場合は血糖低下による脳機能低下の可能性あり要注意といえます。あくまで太りにくい体質にすることは数十年単位の長期戦が前提のことで短期的なものに惑わされないことが必要です。
1.ストレッチ・筋肉トレーニングは効果があるのか
股関節の周囲筋のストレッチは股関節にかかる圧を減らし関節の適合性を改善してくれます。ストレッチは股関節の全面、後面、内側、外側の周囲筋すべてに及ぶべきです。その中でも大腿内側に走っている股関節内転筋のストレッチは股関節を外に開き関節適合性改善してくれます。お相撲さんの股割はまさに内転筋ストレッチの良い見本です。しかしお相撲さんのような柔軟性を出すことはまず不可能ですからやれる範囲で内転筋をストレッチするチャレンジをしてください。内転筋のストレッチの意味合いは手術治療のひとつに内転筋筋きり術というものがありこれで股関節の外転をしやすくすることで股関節の関節適合性を良くしようとするものです。
筋トレに関しては下肢筋力が低下して歩けなくなるという状態であればする価値は多少はありますが、通常の生活をするのに問題ない筋力があれば上半身を含めて筋トレをすることは良い結果を期待することはできません。なぜなら筋トレによってもたらせる効果は筋肥大と筋力増加です。このことによって体重は増え筋肉の質としては硬い筋肉が増えることによって関節にかかる負担が増え関節にストレスがかかるのです。あくまで関節にかかる負担を減らすのはやわらかく質の良い筋肉が増えることが必要といえます。股関節の臼蓋形成不全などの問題がある方は股関節周囲の筋を柔らかくするヨガなど運動が最適といえます。ストレッチをするにしても硬い筋を無理やり伸ばせば筋損傷を起こす可能もあり栄養療法などで筋肉の質を高めながら行うことが安全で効果を期待できます。
2.どのようなスポーツを選択すべきか
スポーツの種類としては股関節への過重負荷が大きいものとして柔道などの格闘技、ジャンプや横の動きが大きいバスケット、バレーボールなどの球技、瞬発性の負荷がかかる短距離走などはお勧めできません。水泳や水中歩行、エアロバイクなどの股関節に体重負荷がかからない運動が最適といえます。その上関節軟骨の栄養は関節液から補給されるため関節に体重負荷をかけずに動きをさせることは軟骨栄養とっても良いことです。筋力アップの方法としては重たい負荷をかけるのは危険ですがエアロバイクなどの負荷でも十分筋力はアップします。また関節を大きく動かさないで筋に力を入れる等尺性運動は最大筋力のアップにつながるし関節に大きな負荷をかけないことで知られています。

股関節の変形と腰痛

関節の変形が進み関節の機能が著しく損なわれると歩行はもちろんのこと椅子にすわったりすることも股関節の屈曲が制限されているためしにくくなります。また股関節の機能が損なわれているほとんどの方に難治性の腰痛があります。これは日常生活の動作やスポーツにおいて腰の機能と股関節の機能はお互いに補完しあっているということが原因にあります。変形性股関節症があり腰が悪くて腰部脊柱管狭窄症の診断がついておられる方がよくおられます。股関節の機能が損なわれますと股関節の動く範囲は制限され少なくなります。腰の状態が健康であれば股関節の動きを腰の機能が補っていくことができるのですが、年齢を重ねていくと股関節の機能を腰の動きで補うことができにくくなり次第に腰の変形を促すことになります。股関節も腰もお互いに動きを補う間柄ですがどちらかというと股関節の動きの悪さが腰に影響をしている印象です。このような方の腰痛には股関節の動きを良くするリハビリにて腰痛が軽快する可能性があります。股関節の動きを良くするリハビリとは股関節の関節面の滑りを良くして股関節周囲筋の筋弛緩をさせることが重要です。そのため手術適応の変形性股関節症と腰部脊柱管狭窄症を同時に持っておられる方はまず変形性股関節症の手術をすることによって腰の状態改善につながる可能性があります。

神経痛による股関節痛

股関節そのものに原因がないのに股関節に痛みを生じることがあります。痛みの原因として考えられるのは腰椎及び仙椎の神経由来の痛みであることがほとんどです。腰椎及び仙椎の神経は第1~第5まであり股関節の痛みの神経根は第1-3腰椎神経根あたりが主な原因となります。(図15.16の神経分布)
腰椎の神経の分布に沿って神経痛として出現する痛みを股関節痛として訴えているのです。神経痛は股関節そのものに原因がある場合と比べると立位などの体重をかけても痛みの悪化はなく股関節そのものに圧痛も少ないことなどが特徴です。

神経の痛みの原因は腰椎の椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などが最も考慮すべきものです。

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