当院で考えるダイエットは、「健康になる」ことを目的として行います。その意味では、漢方、分子栄養学の両面で適したものが数多くあります。無理なダイエットにより、かえって健康を損ねるようなことはしないというのが基本です。
- 下肢がむくんで全体的に「水太り」の方には、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)が効果を示します。防已黄耆湯は関節内の水分を取り去る効能がありますが、特に下半身の関節、そしてむくみに効果的です。食欲も少し落ちるようです。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)も効果があり、市販されている名前は「コッコアッポS」です。この漢方は、多くの生薬から構成されており、便秘に対する下剤、代謝を上げる作用、気のめぐりを良くする作用、アレルギーを抑える作用、炎症を抑える作用、むくみを取り去る作用、血を補う作用などがあります。ひとつひとつの作用は小さいのですが、「総合力で勝負」的な意味合いで脂肪を燃やしていきます。
便秘が強く太りやすい方には、瘀血を良くする大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんびとう)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などが適しています。
- リーンマスボディ(除脂肪体重)を減らすことなく痩せる、これが分子栄養学的なダイエットの目標となります。リーンマスボディとは、文字どおり体重から脂肪の量を除いた部分の体重をいいます。食事量を極端に落とす通常のダイエットでは、特にタンパク質の摂取が少なくなることで、このリーンマスボディが極端に減少します。その結果、最初はうまく体重が落ちていたのに、その後は基礎代謝が落ちて途中から体重の減少が起こらなくなります。そのうち、生命維持に必要なリーンマスボディまでが減少して、「猛烈な食欲」が出現してリバウンドしてしまうのです。
リーンマスボディを減らさないためには、適切なタンパク摂取とビタミンB、ビタミンCなどが必要となります。我々の遺伝子にはタンパク合成の情報が書かれていますが、食べないダイエットやタンパク質を減らしたダイエットでは、遺伝子の情報どおりのタンパク合成ができなくなります。また体の中で脂肪を燃やすにあたっては、体内にある酵素やアミノ酸が必要であり、これらを遺伝子どおりに働かせるには多くのタンパク質、ビタミンが必要となります。血液検査によって脂肪肝があると分かり、血圧が高い、血糖が高いなどの症状がある方は、この分子整合栄養医学的なダイエットを行うことで脂肪肝の改善ができ、様々な合併症の改善につながります。