「すねの周りが痛い」

シンスプリントは過労性骨膜炎と呼ばれ、ランニングなどの繰り返しや、足関節の底背屈運動を強力に繰り返したときに生じることが多い症状です。下腿(すねの周囲)の疼痛を主症状とする症候群に対して用いられ、下腿の筋・腱の炎症性障害として定義されます。年齢的には10歳代で、陸上競技やバスケットの選手に多く発生します。

シンスプリントの原因と病態
過労性骨膜炎の発生メカニズムは、前脛骨筋の過剰な収縮によって生じる「前方型シンスプリント」と、ヒラメ筋や後脛骨筋の過伸張によって生じる「後方型シンスプリント」に分類されます。後方型が最も典型的です。
過労性骨膜炎の発生メカニズム
前方型のシンスプリントは、ランニング動作などを繰り返し、前脛骨筋(足関節を持ち上げる筋肉)を過剰に使いすぎることによって生じるとされています。一方、後方型のシンスプリントは、身体的特性として足部アーチ(土踏まずの部分)が著しく低下した偏平足(写真)の人や、距骨下関節の回内度が大きい回内足(図)の人に多い症状です。ランニングやジャンプ動作による衝撃の吸収時や、力の伝達と重心移動を行うときに機能する後脛骨筋や長母趾屈筋、長趾屈筋、ヒラメ筋が着地の際に牽引され、荷重ストレスを受けます。特に足部アーチに機能する後脛骨筋やヒラメ筋は、荷重時に筋の伸張性収縮を余儀なくされ、結果的に筋の起始部に炎症を引き起こすようなストレスを繰り返すことによってシンスプリントが生じるとされています。
疼痛発生場所
シンスプリントの治療
一般的な治療
教科書的には、疼痛が強い場合は痛みの原因となっているスポーツ活動を一時中断し、患部にかかる負荷を制限します。また、患部に対して物理療法(電気療法など)による消炎鎮痛や、ストレッチによる柔軟性の改善が一般的で、軽症では運動後のアイシングの指導が行われます。
当院の考え方
シンスプリントを起こす選手には、股関節の柔軟性が低下した選手も多く認められます。特に股関節を外に捻る外旋という動きが問題です。股関節の外旋運動に制限が生じると、ランニングの際などに膝関節が内側を向いて、つま先が外を向いた(内股の状態)フォームになり、足のアーチが崩れて後脛骨筋やヒラメ筋に過伸張を引き起こす原因となります。そのため、足関節だけでなく、股関節や膝関節周囲筋の柔軟性の改善が重要となってきます。

体幹や股関節の筋力もチェックポイントになります。腹筋群の中の腹横筋と呼ばれるインナーマッスルや、股関節のお尻の部分の筋肉である大殿筋が重要となります。腹横筋の筋力が低下していると、体幹の姿勢保持が不安定になります。また、大殿筋が筋力低下を起こしていると、地面に対して蹴り出す力や踏ん張る力が発揮できず、股関節上部の体幹を安定させることができなくなります。その結果、膝関節や足関節に過剰なストレスを生じさせ、膝関節が内側を向いて、つま先が外側を向くようなフォームになることがあり、後脛骨筋やヒラメ筋にストレスを生じさせることもあります。そのため、運動の連鎖から評価、治療を行っていくことが重要です。

痛みの程度にもよりますが、スポーツ活動においても運動量と内容の見直しが必要となります。痛みの程度に応じて、ウォーキング、ジョギング、ジャンプ動作、ダッシュなど段階的に運動を開始していくことが必要です。このようにシンスプリントに対しては、足関節、膝、股関節に関与した部分を直していき、患部にかかる力を軽減していきます。

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