抗うつ剤(SSRI)の功罪~補中益気湯との対比から

抗うつ剤(SSRI)の功罪~補中益気湯との対比から

「夢の薬」SSRI

SSRI (Selective Serotonin Reuptake Inhibitors選択的セロトニン再取り込阻害薬)は1980年代アメリカで「うつ」に対する薬剤として脚光をあび、1999年日本でも発売された。
薬理作用は脳内のセロトニンという神経伝達物質の再取り込みを阻害して一時的に増やす薬剤だ。
一時的とは再取り込自体が無駄になるわけでなく、再取り込後は再びセロトニンの材料になるということだ。つまりセロトニンの濃度を一定に保っていたのを一瞬強制的に増やすということである。元来「うつ病」の脳内のセロトニンは減っておりこれを選択的に増やし、副作用も少ないとされ「夢の薬」と呼ばれていた。
脳内の神経伝達物質
脳内の神経伝達物質はセロトニン、ドーパミン、アセチルコリン、グルタミン酸、アドレナリンなど多くあるがこれらはすべてがタンパク質を原材料に脳内で合成される。食欲旺盛な「うつ病」などはあまりいない。うつ病の方の多くが食欲はなくなり脳内の神経伝達物質の原材料が消化管に入ってこない。このことは「うつ」の本質部分の「裏と表」つまり原因と結果であろう。
SSRIの開発経緯
SSRIの開発の経緯をご存じであろうか。元来この薬剤は当初は「やせ薬」として開発された。開発中に「うつ」状態が改善していくため途中から「抗うつ剤」として売り出すことになった。「恋をするとき美しくなる。」という格言は恋をすると脳内のセロトニンがでて食欲が落ちて痩せることを言っている。セロトニンは元来食欲を抑える作用があり、これを薬品会社は「やせ薬」としての可能性にかけたのだ。
つまりSSRIを内服すると食欲が選択的に抑制され、結果としてセロトニンの原材料のタンパクも入ってこなくなる。2006年米国医薬食品局FDAはパキシル(SNRI)内服後数年たつと効かなくなり自殺行動者が多数出たと報告した。このことは食欲がおちてタンパク質が口から入ってこないことと無関係ではあるまい。
女性のうつ
「うつ」は女性に多い。「うつ」になれば身体活動は制限されおのずと外出をひかえ、家に閉じこもりがちになる。もしこの現象が古代に起これば、女性は家の中に多くいることになり、関心のベクトルはおのずと子供や家事に向かっていき、決して不都合なことばかりではなかったはずだ。そのため古代の「うつ」的な女性の多くが病気という範疇にはいらない方が多かったのではないだろうか。現代社会は女性の男女同権の旗印に女性の社会進出でどうしても家の中にばかりおられない。このことはさらに「うつ」の病態を複雑にしてなおりにくくしている。
補中益気湯+分子整合栄養医学
漢方薬の補中益気湯という薬剤の使用目標は津田玄仙によれば、「目に力がない」、「声に力がない」「食後に眠たくなる」など「うつ」の症状にとても似ている。補中益気湯は古代の抗うつ剤ととらえていいだろう。補中益気湯は「補中」とは「中」は消化管を表して温め機能を良くすることである。「益気」とは「補中」をして気を盛んにするということである。つまり消化機能を良好にして全身の元気を増し、免疫を向上させるということであろう。そのため補中益気湯はSSRIに比し「うつ」の上流部分に効果を期待できる。この理論は分子整合栄養医学ではさらに細かい栄養素の選択や補給、機能性低血糖にたいするアプローチをおこなうことで効果をあげている。現時点では新宿溝口クリニックの溝口徹先生はこの分野の日本ナンバー1の医師である。
SSRIの使用目標
私はSSRIを決して使用してはいけないといっているわけではなく、その機能と食事の関連そして栄養レベルを鉄やビタミンレベルまで推し量ることが大切であると言いたいのだ。当院に痛みの患者さんが訪れるが、その中に「うつ」的要素を持つ方も多くおられる。やはり「うつ」の要素に食事や社会情勢の問題が大きく影を落としているようだ。

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