分子整合栄養学は理解し実践することが大切である。20世紀の分子整合栄養学の巨人「三石巌」氏が提唱するカスケード理論を紹介したい。
- 三石巌
- 彼もライナスポーリングと同じ物理学者だ。1901年くしくもライナスポーリングと同じ年に生まれている。東大を卒業後慶応や津田塾の物理学の教授をされていた。彼のすごいところは幸いにも重症の糖尿病であったことだ。「不幸にも糖尿病だったとすべきではないか?」の間違いではないかと思われるかもしれないが、やっぱり「幸いにも」である。というのも糖尿病であったことが彼は自分を実験台ににしながら分子整合栄養学へと傾倒していき、その後の発展へと導いたからだ。彼はライナスポーリングがビタミンCを中心にしてすべて合成のビタミンを使用していたのに対して、合成品のビタミンEは効果の点で天然ものに比し劣ることを知っていたため天然のものビタミンEを使用していた。そして1994年にライナスポーリングは93歳の時に前立腺がんで他界したが、三石巌氏は前立腺がんの原因は合成ビタミンEであると言い放っている。そして三石巌氏は1997年95歳で他界するが、その前年まで軽井沢でスキーに興じている。ライナスポーリングに目立った基礎疾患は報告されていないのに対して三石巌氏が重症の糖尿病であり、3年近く長生きをしたことを考慮すれば三石巌氏に軍配が上がりそうだ。
- カスケード理論(段々滝)
- 彼は家族の中で自分だけが白内障になったのはなぜだろうという疑問からこの理論を思いついている。白内障の予防に有効なビタミンCで考えみると、その作用は、活性酸素除去、コラーゲン合成、抗ストレスホルモン合成、抗ウイルス作用、白内障予防作用などがある。(他にも多く作用はある)しかし三石巌氏自身は糖尿病がありビタミンCの消費が大きく白内障予防までビタミンCがいきわたらなかったと考えたのだ。この考えをわかりやすくすれば、一家の家計簿をあずかる主婦がいて、給料をもらいそれを子供の学費やご主人の交際費にはあてるが自分の遊興費にはまわらないため我慢しようみたいなものだ。つまり給料がビタミンCで子供の学費が活性酸素除去で白内障予防が自分の遊興費ということになる。
- タンパクのカスケード
- がんの予後を左右する因子として血液検査ではアルブミンが指標となる。アルブミンは卵白を意味する語源で血中のタンパクの栄養指標となる。この値は年を取るにつれて低くなるが壮年期、老年期(50歳以上)では4.5g/dl欲しいが4.0g/dlあれば良しとしてよいだろう。がん患者の指標として栄養状態を高め4.0g/dlを維持するとが肝要であるが最低3.5g/dl以上必要である。(本音はやはり4.0は欲しいところだ)
- アルブミン値の上げ方
- このカスケード理論はビタミンCに限ったことではなくすべての栄養素に当てはまるのだ。タンパク質に当てはめてみる。タンパク質とくればみなさんは筋肉を連想されるでしょうが、実は我々の体はすべてタンパクの構造物なのである。タンパクのカスケードを考えれば優先順位はまずは生命維持のための血液成分であろう。次に来るのは脳などの中枢神経、消化管、心臓、腎臓などの内臓類そして感覚器、皮膚などとなり、筋肉などは優先順位としてはかなり下位であろう。しかし巷では老人のリハビリにパワーリハビリなどと称して筋肉を鍛えさせている。口から入るタンパク量を増やせば、カスケード下位の筋肉も潤い肥大していくだろう。しかし口から入るタンパクの量が増えなかったらどうなるであろう。筋肉を鍛えることで体のタンパクカスケードが変化して筋肉の優先順位を上げてしまう。その結果は優先順位上位の臓器や血液成分が割を食ってしまう。運動選手が練習のしすぎで風邪をひくことは良く知られ多事実であるが、これは練習のしすぎで免疫細胞までタンパクのカスケードがいかない結果である。老人もこれと同じことが予想できる。つまり食欲旺盛で元気な方は筋肉を鍛えることは安全であるが、食欲がない老人はまずは食べることができるようにすることが先決となる。カスケードは他のビタミンなどの栄養素に適応されるが後は応用ということになる。次は代謝の話をしよう。
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