コレステロールの真実

コレステロールの真実 その1(コレステロールは悪者か?)
「コレステロールが高いと心筋梗塞になる。」
コレステロールが高いと血液が「ドロドロ」なって血管がつまる。
「あなたはコレステロールが高いから爆弾を抱えているようなものだよ」などなど医療機関などでこのようなことを言われ、「コレステロール低下薬」を飲んでおられる方は多くおられる。
本当にコレステロールは私たちにとって悪者なのか?
コレステロール悪者説
1843年動脈硬化を起こした血管にコレステロールが沈着しているのを見つけた。
1913年ロシア人研究者ニコライ・アニチコフがウサギに卵などのコレステロール豊富な食材を食べさせて、動脈硬化を起こさせた。
しかしウサギは元来草食動物で私たち人間は「植物」、「肉」、「魚」、「卵」などを食べる雑食性の動物である。
別の研究者が私たちと同じ雑食性の「犬」「サル」などに卵などの高コレステロールの食材を与えて実験を行ったが動脈硬化は全く出現しなかった。
しかしウサギの実験結果の段階でコレステロール悪者説は世界中を席巻し製薬会社は「スタチン」というコレステロール低下薬を発売することになった。
この時点で何が真実でどういう意図が存在したかは読者の判断にお任せする。
コレステロールの役割
コレステロールは60兆個ある細胞の膜の成分で、骨格のような役目をするため低下すると細胞の形が保持しにくくなる。体の中で多い臓器は肝臓・脊髄・脳で脳神経には全体の1/4、神経系には1/3のコレステロールがある。神経系に多い理由は神経細胞自体がアメーバーのような複雑な形を保持するため大量のコレステロールを必要とするのだ。そのためコレステロールの低下は神経細胞の形保持に悪影響して、うつや認知症の発症率が上昇する。「驚くべき可能性ビタミンD」のところでも述べたように生命維持に計り知れない役割を持つビタミンDは皮膚でコレステロールと紫外線B波より合成される。
このビタミンDは核内でDNAのスイッチを入れる生命維持のスーパーファミリーであるが、コレステロールを原材料にするスーパーファミリーは副腎皮質ホルモン、男性ホルモン、女性ホルモンなどがありその役目の重大さは計り知れない。消化液の胆汁酸もコレステロールを原材料にする。

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細胞膜Wikipediaより(黄色がコレステロール)

役割の考察
細胞膜の骨格にあたるためコレステロールの低下は細胞の形を保にくくなる。体細胞の中で筋肉細胞、赤血球の数が多いがコレステロールを無理に下げると筋肉細胞・赤血球の細胞膜異常が容易に起こることが予想される。前者の場合は結果として横紋筋融解症(激しい筋肉痛などをおこす)などにつながり、後者は赤血球の寿命の短縮(結果として貧血)につながる可能性がある。
またガンの初期の段階はDNAの異常であるが、次の段階では細胞の形が変形してくる。この場合膜の強度が関係している可能性がある。コレステロールが低い方のがんの死亡率が高いのはこの膜の強度と関連しているのではないか。
コレステロールの真実 その2(卵を食べるとコレステロールは上がるのか?)
「卵やお肉はコレステロールが高いから食べるな!」「コレステロールが高い方は卵やお肉を食べるとコレステロールが上がって心筋梗塞になる」などと医療機関で言われ、卵などは1週間に1個までと決めている方は多くおられる。これってほんとうなの?
卵とコレステロールの関係
コレステロールの罠その1で述べたようにコレステロールは生命維持に欠かせないものである。
生体はこのような大切なものは自前で合成できるようにしている。例えばアミノ酸は必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分けられるが、後者の非必須アミノ酸の方が大切なため体内の合成経路が残っている。コレステロールも足りなくなると生命維持ができないため、体内で必要な70-80%は肝臓や皮膚で合成する。
(ほとんどが肝臓)残りの20-30%を食物からいただくようになっている。そのため食物からの摂取が増えると体内合成は減り、摂取が減ると体内合成は増えるというような調節ができている。
図1は卵摂取とコレステロールの関連のアメリカの27378名のデータであるが、全体でみると明らかに卵を食べている方がコレステロール低く、この傾向は女性でさらに顕著になる。
男性の場合はその傾向はやや減速するが、多く食べるほうが少なく食べるよりコレステロールが低い。
これらの結果は短期的には卵を食べるとコレステロールは若干上昇するが、半年単位などの長期的にみればコレステロールは下がっていくのである。
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長寿のためのコレステロール ガイドライン2010年版から
これらの結果から言えることはコレステロールを下げるために「卵、肉類」を減らすことは逆効果であるということで3あり、コレステロールの高い方が卵などを控えなくても良くなったということだ。
ヘルシンキスタディ(規模として1000人以上を対象とする)
長寿のためのコレステロール ガイドライン2010年版から
考察
卵を食べるとコレステロールが上がるという研究はどこにもないにも関わらず、卵黄に含まれているコレステロールを多く摂取すれば血中コレステロールが上がるという短絡的な考えで、ほとんどの方が卵を控えている。
しかし現実的には卵はコレステロールを多く含むが、それを下げるレシチン(フォスファチジルコリン)も含まれておりやはり結果的にコレステロールをあげない。
その上リノール酸という油脂にこだわり、動物性の油脂、卵の摂取を控えるということが心疾患死亡率をあげている。
この事実以外にもリノール酸を取りすぎるとがんなどの様々な疾患の原因になり、動物性脂肪は悪さをしないという研究結果は多い。
リノール酸はω6系の不飽和脂肪酸であるがこの系統の油脂はがんやアトピーなどの原因になり、それに対して魚油などはω3系であり、こちらの方は炎症を抑え動脈硬化を防ぐことが知られている。
コレステロールが高いといわれると、ほぼすべての方がコレステロール含有の高い卵・肉の摂取を極端に控え始める。
DNAの情報はタンパクの設計図であり、設計図通りのものを作り出すためにはかなりのタンパク質が必要である。肉・卵を控えるとすれば良質なタンパク供給原が乏しくなる。
このことも心疾患死亡率を上げた要因かもしれない。
コレステロールの真実 その3(コレステロールは低い方が良い?高い方が長生き?)

コレステロールは低い方が良い? 高い方が長生き? この論争について循環器系の医師の日本動脈硬化学会と医師以外が中止となっている日本脂質栄養学会が対立している。

日本動脈硬化学会と日本脂質栄養学会
双方の言い分を要約してみる。
日本動脈硬化学会:動脈硬化の初期病変にはLDLコレステロールが沈着しており、LDLコレステロールを低下させると動脈硬化病変の改善が見られることからこれを低下させることは動脈硬化の増悪を妨げ脳血管障害・心筋梗塞の予防になりうる。
そのためコレステロール140mg/dl以上を高LDLコレステロール血症と診断している。これは高齢者でも女性でも同様と考える。

日本脂質栄養学会:動脈硬化にLDLコレステロールが関与するのはわずかであり、これを低下させても心臓病・脳血管障害の予防にはなりえない。
総コレステロール、LDLコレステロールが異常に高い遺伝性の家族性高コレステロール血症の方とそうでない方は全く予後が違っており、家族性高コレステロール血症でない方の予後は総コレステロール、LDLコレステロールが高い方が長生きである。
元来日本では欧米諸国と比べ心疾患の死亡率は1/4~1/3程度でコレステロールと心疾患死亡率に相関が少なく、特に女性では欧米諸外国でもほとんどコレステロール低下薬は処方されていない。
これらのことをふまえ、日本でのコレステロールの診断基準が低すぎるため多くの方が病人にされている。

EUの新法(利益相反禁止)
このように日本動脈硬化学会と日本脂質栄養学会は真っ向から意見の対立している。
日本動脈硬化学会の基準は「コレステロール仮説」からトップダウンにコレステロール低下を提唱している。当初コレステロール低下が心疾患に抑制的に働く研究発表が多くあり支持されてきたが、しかし2004年EUで「薬剤を販売する会社と利害関係のある研究者の論文は採用しない」という新法が発行した。
驚くべきことにこれ以降の研究発表では「スタチン類はLDLコレステロールを著しく下げたが、心疾患ハイリスク群、家族性高コレステロール血症、狭心症、腎不全、心不全、糖尿病などの対象者について、心疾患の予防効果は認められなかった」と報告している。
これに対して日本脂質栄養学会は心疾患を含め全体の死亡率はどの程度のコレステロール値の時に低くなるかを統計的なデータを詳細に分析して結論を導いている。
EU新法以降の結果からして「コレステロールは低ければ低い方がよい」「女性、高齢者にも一律にコレステロール低下薬を処方する」といった風潮はやや影をひそめ始めている。

*コレステロール仮説について:「動物性脂肪とコレステロールの多い卵などの摂取を減らし、リノール酸の多い植物油を増やすと血清コレステロール値は下がり、動脈硬化・心疾患が予防できる」
*EU:欧州連合のことでこの場合はこの欧州連合の国をさす。
コレステロールの真実 その4(コレステロールと心疾患の関係は対象年齢によって違う)
日本脂質栄養学会の見解
高コレステロール血症は心疾患に対する影響は年齢によって異なる。40歳までの若い方たちはコレステロールの上昇とともに心疾患の割合は増えるが、40-50歳以上の方たちでは増えない。(図5参照)
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図5 長寿のためのコレステロール ガイドライン2010年版から
このことの意味することは若年層の高コレステロール血症の中に高率に遺伝性の家族性高コレステロール血症の患者を含み、彼らは10歳代より心筋梗塞を発症して早死にする可能性が高い。
年齢が高いグループは加齢でコレステロールが上昇してきた方たちが多く含まれており、彼らはコレステロールが上昇しても心臓疾患に影響は与えない。
逆説的に考えれば、若い時はコレステロールが高くなくて年齢を重ねるごとに高くなる方は家族性高コレステロール血症の可能性は限りなく低く、このような方が高齢になった時にはコレステロール値と心疾患は相関しにくいことになる。

家族性高コレステロール血症とそうでない方はコレステロールの代謝はまったく違っており、前者は細胞でコレステロールの受容体が欠損しているためがこれを利用できなくなる障害が存在する。
健常者はそのような代謝障害は存在せず、経口でのコレステロール摂取は体内での合成を抑制する機構が備わっている。
平均寿命も短縮しヘテロ型で平均寿命の80%、ホモ型で40%となる。
そのため高齢になると悲しいかな家族性の高コレステロール血症の方は死亡し淘汰され数がすくなるため、高齢者ではコレステロールの値と心疾患に相関がなくなってくるのである。
この考え方が正しいとすれば、コレステロール代謝が正常な方とそうでない家族性高コレステロール血症の方は予後も薬物治療の適応なども全く違ってくるようだ。
コレステロール正常代謝の方が高齢になりたとえ高コレステロール血症になっても薬物治療などの適応になることはほとんどなく経過観察がベストの選択であろう。

*:遺伝性の家族性高コレステロール血症FH:LDLコレステロールの受容体異常がありコレステロールが細胞内で利用できない。
ホモ型(FH遺伝子が2つそろう時)は100万人に1人ヘテロ型(FH遺伝子が1つの時)は500人に1人の割合で出現し10歳代で心筋梗塞を起こし短命である。
血液検査以外での診断としてアキレス腱、眼瞼、関節伸側の黄色腫(腱等肥厚として触れる)が特徴的。
若きときからコレステロールが高くヘテロ型は320-350mg/dl,ホモ型は600-1200mg/dlとなる。

最後に
コレステロールを下げるということに関して整形外科的な問題は多くある。
副作用の一つに横紋筋融解症があるが、コレステロール低下薬を内服されている方にこの診断が下る確率は極めて低い。
しかしコレステロールが細胞膜の安定化に大きく貢献しており細胞膜が不安定になり破壊がしやすくなれば体細胞の中で細胞数のきわめて多い筋細胞と赤血球の破壊が亢進することは容易に想像できる。
当院を訪れる方でコレステロール低下薬を内服されている方のほとんどが検査データを詳細に分析すれば筋細胞・赤血球の細胞破壊亢進と細胞膜の脆弱性が読み取れる。その薬剤の内服を中止すると細胞破壊亢進と細胞膜の脆弱性が時間経過とともに回復し、肩こりや腰痛が軽減してくる。
これは経験的に間違いない事実でありコレステロールを下げるということの意味の恐ろしさを感じている。

参考文献
大櫛陽一:100歳まで長生きできるコレステロール革命、株式会社永岡書店、東京、2012年
奥山治美・浜崎智仁・大櫛陽一・他策定委員:長寿のためのコレステロール ガイドライン2010年版、中日出版社、名古屋市、2010年
北徹:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007、株式会社協和企画、東京、2007年
斉藤糧三:サーファーに花粉症はいない、株式会社小学館、東京、2012年
ミッシェル・ド・ロルジュリル(浜崎智仁訳):コレステロール 嘘とプロパガンダ、株式会社篠原出版社、東京、2009年

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